インタビュー特集

「ダンス✖️演劇」コラボレーションから生まれる新たな身体表現の可能性 オドリアイ・須田七瀬さんインタビュー【vol.1】

「ダンスを通して、ひとりひとりの可能性を最大限に活かせる環境を創出したい」。そんな思いから2019年に「オドリアイ」というプロジェクトを設立した、ダンサーの須田七瀬さん。設立翌年から年に一度、一般から公募した参加者が集うダンス公演を開催。詩の朗読や生花のライブパフォーマンスなど、様々なアーティストとコラボレーションしたダンス作品を発表している。また、最近では演劇の舞台での振り付け指導も担い、ダンスを軸とした多様な分野の表現活動を行っている。ダンスと演劇、異なる分野をつなぐ須田さんが探求する「身体表現の可能性」について聞いた。【2回連載の1回目】

──須田さんがダンスを始められたきっかけを教えてください。

10歳の頃に宝塚歌劇に憧れて、ダンスの稽古を始めました。私の母が宝塚歌劇を大好きで、その影響で宝塚の舞台を見に行ったのがきっかけです。最初はクラシックバレエ、タップダンス、歌の3つからスタートしました。高校生になってからは違うジャンルもやってみたいと思い、ファンクジャズのダンスも習い出しました。色々なダンススタジオに行って、様々なスタイルのダンスを経験しましたね。
高校卒業後もダンスを続けて、20代になった頃からダンススタジオの講師としての仕事もしながら、色々な舞台で活動してきました。
約10年前からフィットネスクラブでもダンスのクラスを担当しているんですが、そこの生徒さんたちが舞台に立つ機会がなかったんです。自分自身を振り返ってみても、舞台に立つことを目標として、そのためにレッスンを頑張っていた部分は大きかった。やっぱり発表の機会がない環境だと「ダンスを続けたい」という生徒さんたちの気持ちが、どうしても落ちてしまうと感じていたんです。だから「自分で発表の場を作ろう」と思い立ち、2019年に「オドリアイ」というプロジェクトを設立して活動を始めました。
「オドリアイ」では2020年から毎年公演を開いて、詩人や華道家など多分野のアーティストの方たちと、ダンスがコラボレーションした作品に取り組んでいます。

 

──多彩なジャンルの方々とコラボレーションされている須田さんが、演劇と関わるようになったきっかけを教えてください。

私がダンスを教えているクラスに、たまたま、京都を拠点に活動している劇団「安住の地」の代表の中村彩乃さんという方がダンスを習いにきてくれたんですね。私も元々ミュージカルも好きで、演劇の世界にも興味がありました。その中村ちゃんと色々と密に話をする中で、「ダンスと演劇って、何か一緒にできないかな」「ダンスと言葉は、どんな風に関わっていけるのかな」というようなことを考えるようになっていきました。
ちょうどその頃、私の子供が通っていた保育園のママ友でもある「合同会社stamp」というお芝居の会社の代表社員・山口茜さんという方から、「今度公演があるので、お手伝いしてもらえませんか?」とお誘い頂いたんです。それがきっかけで、劇作家・演出家である山口さんが主宰する「サファリ・P」の舞台の振り付けを担当させてもらうことになりました。ダンスの表現の新しい可能性を考える上でも「言葉の世界である演劇を経験できるのはチャンスやな」と思って、山口さんのお誘いを引き受けさせていただいたんです。

「サファリ・P」では、私も演劇のお稽古場に一緒に居させてもらって、シーンが立ち上がっていく中で、「この場面はセリフのやりとりだけではなくて、それに変わる体の動きで表現してみたい」というようなオーダーを演出家である山口さんから頂いて、「じゃあ、こういう風に動いていこうか」ということを提案します。
役者さんがダンスを踊るということではなくて、何かのシーンの中で、ものを動かす時の体の動かし方だったり、動き出すタイミングだったり。言葉を動きに変えるっていうよりも、少し抽象的なものにするというか、そういうシーンでの体の動かし方を役者さんと一緒に作って行きます。「ああしてみようか」とか「じゃあ、こうしてみようか」と、一緒に舞台を作らせてもらっているような感じですね。

役者さんの体は、ダンサーさんの体とは持っているものが全然違います。日頃からダンスのレッスンをしている方ばかりではないので、そのあたりの難しさは感じました。でも、みんな身体能力が高いので、それぞれの体でいていただく、っていうのがベストな状態だと思っています。「サファリ・P」のお芝居は、身体で表現する部分がとても多いんです。そういう演劇の現場のサポートを実際に経験する中で、私自身も、もっともっとクリエィテブにならないといけないなと、すごく思いましたね。
(続く)

須田七瀬
オドリアイ代表。1981年京都生まれ。バレエ、ジャズ、コンテンポラリーダンスをメインに舞台やイベントなどで活動中。佐藤知子率いるArt Performance Project 「Amoeba」に、2006年のプロジェクト立ち上げ時から在籍し様々な舞台に出演。ソロ作品の創作にも精力的に取り組み、2020年には東京シアターXでの国際舞台芸術祭に参加。全国から集まったアーティストたちと意見交換しながら、今面白い作品とは何かを追及している。
一方で、なんばグランド花月での「テンダラー単独ライブ」など、吉本お笑いライブへのダンサー出演、振付も担当するなど、芸術性の高いものからエンターテイメント色の強いものまで、活動は多岐にわたる。
また「NPOさをりひろば」とともに、障がいがある方たちへのダンスワークショップを開催。パーカッションとダンスのチームを結成し、関西を中心に野外でのライブイベントや劇場公演などでパフォーマンスをしている。

ダンサー、振付家以外の活動としては、フランクリンメソッド・エデュケーターとして、踊る身体と解剖学を学ぶためのワークショップも定期的に開催している。
2019年に設立した「オドリアイ」は、ダンスを通じて、ひとりひとりの可能性を最大限に活かせる環境づくりを目指し活動している。2020年から年に一度、一般から参加者を募りダンス公演を開催。自身の振付作品の他、様々なジャンルのアーティストとのコラボレーション作品を発表し好評を得ている。2022年「オドリアイ2022」が西京区地域力サポート事業の対象団体となる。2023年11月に京都府立文化芸術会館にて公演開催決定。


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