演劇ユニット「はひふのか」 俳優✖️女優✖️ミュージシャン、 独創的な舞台を生み出す3人の人間ドラマ【vol.3】
京都を拠点に活動している演劇ユニット「はひふのか」は、2014年に結成された。現在のメンバーは、俳優・サウンドロゴクリエーターの原田博行さん、ともに「劇団そとばこまち」出身の女優・日詰千栄さんと、俳優・映画監督の福山俊朗さんの3人だ。代表作である場末のショーパブの楽屋を舞台にした3人芝居シリーズ『Moonlight Club』は、これまでに16回の公演を数える人気作品で、2021年には自主制作による映画も公開された。役者3人の個性が自由奔放に交錯する「はひふのか」は、演劇でも映画でも、笑いあり涙ありの人情味あふれる人間ドラマを作り出している。それぞれの演劇にかける思いと、これから演劇を志す若い人たちに伝えたいメッセージを聞いた。【3回連載の3回目】
(前回の記事→演劇ユニット「はひふのか」 俳優✖️女優✖️ミュージシャン、 独創的な舞台を生み出す3人の人間ドラマ【vol.2】)
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──みなさんはそれぞれに仕事を続けながら、演劇や映画の制作に携わっておられます。「演劇以外で仕事を持ちながら、自分のやりたいことをやる」という生き方について、どのように考えていらっしゃいますか?
福山:そうですね、やっぱり、自分は恵まれているなと思いますね。「演劇だけ」「エンターテイメントとして自分がやっているものだけ」で生活するというのは、やはり難しいことですよね。だから、生活のための仕事が他に色々とあって、それとは別に、ずっと演劇の世界に関わり続けていられるというのは、すごくラッキーなことだと思っています。
ただ、今後、自分が役者として売れていった時に、スケジュールがどんどん入ってくることになれば、多分、今やっている他の仕事との両立は難しくなってくると思うんですよね。そうなった時にどちらを選ぶかは、考えないといけないと思います。
日詰:演劇以外に他の世界があると、そこで味わった悔しさとか、びっくりしたこととか、社会的なこととか…。そういう様々な経験を、別のところに持っていけるんです。自分の感情も含めて「使い回せる」というか、「芸の肥やしになる」というか。自分を取り巻く世界の中で、ひとつのところでへこんだとしても、別のところでその経験を活かせることもあります。
そういう意味で、別の仕事があることでちょうどバランスが取れて、演劇に役立てられるという面はあると思いますね。
──はひふのか」として演劇を16回公演した後に、今は映画という方向にシフトされています。2021年に公開された映画第1作『Moonlight Club THE MOVIE』を皮切りに、2作目の『Moonlight Club in 長寿庵』を制作され、現在は3作目となる『Moonlight Club in LOVE』の公開準備を進めておられます。福山さんは映画では監督も務めていらっしゃいますが、演劇で培われた下地は影響していますか?
福山:これまで公演を重ねてきた『Moonlight Club』を映画にしているので、それは大きいと思いますね。手法というか、(舞台の)板の上でやるのと、カメラの前でやるのは、演劇と映画で全然違うものではあります。けれど、もともとのテーマというか、映画にしている作品自体はこれまで「はひふのか」としてやってきたものなので、映画としてその上に成り立っている部分は大きいです。
映画を1作目、2作目と回数を重ねる中で、それぞれのメンバーの中で作り方も段々と分かってきた部分もあると思います。
最初の頃は、本当に手探りでやっていたんですよ。色々な人に教えてもらったり経験を積む中で、キャストもスタッフもこの間に本当に上達してきました。現在準備している3作目は、1作目や2作目と比べると、完成度も上がってきています。これまでの映画とは全然違うものに仕上がっているという自信はあります。
──なるほど、映画の公開が楽しみですね。最後に、今、学生演劇に取り組んでいる若い人たちにメッセージをお願いします。
原田:僕は、「演劇をしたい」「舞台を作りたい」という思いを実現するための方法は、どんなものでもいいと思っています。「お芝居をやりたい」という自分の気持ちを実現するために、知恵をいっぱい使えばいいと思います。
僕ら「はひふのか」も、ほとんどの公演をライブハウスでやってきました。会場がライブハウスなので、お客さんが食事しながら舞台を見ていたりもします。「それって演劇じゃないやん」という人もきっといると思います。でも、16回の公演を続ける中で「これも演劇やで」と言っていいんだと思うようになったんです。
大きい舞台で、照明や音響の人がいて、舞台監督がいて…みたいな世界じゃないけれど、「はひふのか」は確かに演劇だと思うんです。だから、本当にやりたいことを実現する方法論って、いっぱいあるんじゃないかと思います。
日詰:学生さんたちには、「『お芝居をやりたい』と思う炎が自分の中にあるのなら、それを消さないで」と言ってあげたいですね。やりたい気持ちがあるなら、ぜひ燃やし続けてほしいです。
演劇は色々なところとつながっていると思います。人前で話ができるという技術は、例えば仕事でプレゼンをする場面でも活きてきますよね。
「演劇」だけが他から独立しているわけじゃなくって、演劇に詰まっている全部が他のことにもつながっていると考えれば、経験したことは何にでも活かしていけると思います。
福山:2人も言っているように、本当に「演劇をやりたい」と思ったとしたら、どんなやり方でもあると思います。
実は、僕は40代まで「役者として売れないといけない」とか、「これで食べていかないといけない」と考えて、それがプレッシャーになって、気持ちの面でしんどくなっていた部分がありました。
もちろん、演劇一本で暮らしていけるんだったら、それに越したことはないのかもしれません。けれど、「演劇が好き」という思いがあるなら、別の仕事をやりながらでも、自分の好きなことは続けていける。そう気づけた時に、自分自身がさらに深く、広い視点で、演劇と向き合えるようになりました。
だから、みなさんもあんまりこだわり過ぎないで、フレキシブルな感じで、気軽に演劇をやってもらったらいいんじゃないかなと思います。(おわり)
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演劇ユニット「はひふのか」
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