インタビュー特集

互いにぶつかり合い、乗り越えた先の「舞台」 リツゲイ、卒団公演を終えて

「学生の街」京都には多くの学生演劇サークルや劇団が存在し、個性が光る舞台表現に取り組んでいます。京都を代表するサブカルチャーである学生演劇の世界と、そこで活躍する学生たちにスポットを当て、知られざる学生演劇の魅力に迫る「学生演劇応援団」のインタビュー特集。第7回は、劇団立命芸術劇場を取材しました。

創立から50年以上続く通称「リツゲイ」は、立命館大学で活動する伝統ある演劇サークルです。17人のメンバーが在籍し、日常を描いた会話劇を得意としています。

第1回の記事でもインタビューに答えていただいたリツゲイの皆さん。今回で二度目の登場です。11月の卒団公演を終え、新しい団長に就任した青木智也さんをはじめ、メンバー5人に話を聞きました。

左から順に、新団長の青木智也さん、3回生の紺屋太志さん、真鍋秀平さん、黒田智哉さん、元団長の菅田倫代さん

──11月に行われた卒団公演「ロボット刑事」のあらすじを教えてください。

菅田:舞台は近未来。異常気象や環境汚染が進んで人類がまともに暮らせなくなった日本です。限りある資源を独占するため、階級制度を作り上流階級だけが快適に生き残ろうとしています。対して、低流階級はひどい暮らしを強いられています。
そんな中で主人公である警察のロボット「K-1」が、対立する人々がみんなで平和に生き延びる道を、葛藤を抱えながら模索する話です。

──面白そうですね!見どころを教えてください。

黒田:主人公はロボットですが、少しずつ人間の心が芽生えていくところです。色々な人と接する中で、何がみんなの幸せなのかと苦悩しつつ成長していきます。そんな「K-1」の姿が、周りの人間たちに変化をもたらしていくところも、見どころです。

「ロボット刑事」(提供:劇団立命芸術劇場)

──主人公のロボットらしい動きが印象的でした。

真鍋:直前まで団員のみんなにダメ出しを受けました(笑)。どうしても感情が入っていまい、「人間にしか見えない」と注意を受けたこともありました。公演は3日間あったのですが、初日や2日目の反省点を踏まえて、千秋楽で最高の形に持っていけるように、他の団員にフィードバックをもらいながら動きを練り直して、最後の最後まで磨きあげました。

「ロボット刑事」(提供:劇団立命芸術劇場)

──公演期間中も練習されるのですね!今回の公演で大変だったことはなんですか?

黒田:あまり時間がなかったので、役作りがなかなかうまくいきませんでした。私の演じた都市の総督「赤尾」は組織のトップなので、威厳のある、感情の揺れ動かない話し方を意識していました。

「ロボット刑事」(提供:劇団立命芸術劇場)

菅田:私は低流階級の少女「新島」を演じました。演出さんから「とにかく可愛く!」と言われていましたが、練習中は「可愛さが足りない」と指導を受けることも。周りの役者たちと練習を繰り返し、本番では新島の可愛さと、その中にある強さも表現することができたと思います。

紺屋:私は情報宣伝に所属し、Twitterを動かしました。投稿文の行間を空ける、絵文字をたくさんつけるといった工夫をして、多くの人に見てもらえるようなツイートを心がけました。他にも、役者へのインタビュー動画などの企画を立てて毎日ツイートするなど、さまざまなアプローチを試みました。

青木:私は、照明を担当しました。立命館大学の学生会館の劇場は箱庭型なので、照明で場面の違いを表現する必要があります。毎回のことですが、その調整が難しくもあり、工夫できるのでやりがいもあります。

「ロボット刑事」(提供:劇団立命芸術劇場)

──卒団公演ということで、今回の公演で3回生の皆さんは引退だそうですね。今までのサークル活動を振り返っていかがでしょうか?

真鍋:完全にやりきりました!今年に入ってからすごく活動が楽しかったんです。

その中でも、夏公演・卒団公演では役者だけでなく、舞台監督を兼任したことが印象深いです。舞台監督は、全体のスケジュール管理を執り行うまとめ役です。しかし夏公演では、今までずっと役者のみをやってきたこともあり、最低限の仕事しか果たせませんでした。それで、先輩に叱られてしまいました。
でも、後輩たちが「次、頑張りましょう」と背中を押してくれたんです。そこで、先輩方に舞台監督としてやるべきことを聞いてリストアップし、卒団公演ではそれらを全てやり遂げることができました。過去の反省を活かし、集大成としてふさわしい公演ができて、やり残したことはありません。

紺屋:点数をつけるならば58点でしょうか。楽しかったからこそ、やりきったとは言えないというか、もっと飽きるまでやり続けてみたかったなと思っています。私は演劇することも好きですが、「このメンバーでやる演劇」というものに価値を感じていました。お互いにぶつかり合って、それを乗り越えてきた経験があるからこそ、今のメンバーが大好きです。みんなとなら、演劇に飽きることはなさそうなので、やりきったと思える日はこないかも。

──リツゲイへの熱い想いが伝わってきました。2回生の青木さんはどうでしたか?

青木:私は今の2回生の中で一番入団が遅かったので、他の2回生と比べて、はじめの方は先輩との関わりが少なかったんです。卒団公演の打ち上げのとき、帰るのが惜しくて、「先輩方ともうちょっと遊びたかったです」とこぼしてしまいました。それほど入団が遅かったことを後悔しているし、3回生の先輩方と離れるのが惜しいです。

黒田:私たち3回生は入学と同時にコロナが始まったので、丸1年間サークル活動ができませんでした。それから2回生になって活動が始まって、その時に彼ら(現2回生)が入学してきた。だから一緒に仕事を覚えてきた同期みたいな感覚です。

青木:今までの「先輩」というイメージと違って、親しみやすい先輩方でした。だからこそ余計に寂しいです。

──心温まる関係ですね。青木さんは一番最後に入団したのに新団長に就任したのですね。どのような経緯だったのでしょうか?

青木:まさか団長になるとは思っていませんでした(笑)。最終的には立候補しましたが、紺屋先輩に背中を押していただきました。

紺屋:青木くんはすごく包容力があります。メンバーに注意するときは注意するけれど、伝え方を考えることができる。日頃から彼のそういう姿を見ていたので、「団長に向いているんじゃないの?」という話をしました。

──現団長から新団長にメッセージはありますか?

菅田:「君ならできる!」です。すでに、青木くんは新団長として着実に仕事を進めていて、すごく頼もしいです。信頼しています。

──「君ならできる!」、いい言葉ですね。皆さんのお話を聞いて卒団公演をもう一度見たくなってきました。

真鍋:今回の公演の千秋楽の映像は、リツゲイのYoutubeチャンネルで配信する予定です。私たちの集大成を、多くの方にご覧いただければと思います!

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