インタビュー特集

京都学生演劇祭2023大賞に選ばれた「青コン企画(仮)」 「間違って埋められてしまうもの」を掘り起こす

9月9日〜16日まで京都市左京区の野外特設舞台で開催された京都学生演劇祭。大賞を含め計6賞を受賞したのは、同志社大学の学生を中心に構成された演劇ユニット「青コン企画(仮)」の 『贋作E.T. の墓』だ。来年3月には、全国学生演劇祭の出場を控えている。メンバーの村側晃太郎さん、脚本・演出を務めた藤原千代さんに、今の思いと今後の展望を伺いました。

撮影:脇田友

──まずは京都学生演劇祭での6賞受賞、おめでとうございました。終わってみていかがですか?

村側:京都学生演劇祭には、これまで役者として出たこともあり、何かと縁がありましたが、青コン企画(仮)は自分たちで立ち上げた団体。しかも今年で僕は5回生なので、そろそろ参加団体側としてはラストイヤーかなと思っていました。特別な思いで参加した演劇祭で、こんなに賞をいただけたのはとても嬉しかったです。

藤原:「信じられない!」というのが正直な感想です。作品作りは毎回大変ですが、今回の公演はアクシデント続きだったので…。企画段階では大賞を取ることを目標にしていましたが、本番の直前は「とりあえず上演できること」が目標になっていました。

撮影:脇田友

──大変だったのは、上演直前の挨拶でも話されていた「公演直前での欠員」という部分でしょうか。上演本番は全くアクシデントを感じさせないクオリティでした。

藤原:欠員が出る前から、公演の準備がうまく進まなくて。やりたい要素はたくさんあったのですが、上演時間45分間という制限の中で、「それをどうドラマに仕上げるか」という点に苦悩しました。僕の脚本の遅れが、宣伝や演出面の遅れにも繋がって…。最後は役者にもたくさん負担をかけました。

村側:僕は役者として参加していましたが、最後はもう「やるしかねえ!」という感じでしたね。もともと所属していた第三劇場の公演準備時間が5〜6週間と、学生劇団では比較的短いこともあるし、我々2人とも締切前ギリギリになって大慌てで根をつめるタイプなのもあって、短期間でガッと作る「火事場の馬鹿力」が身についていたのかな、と。もちろん本当は、もっと余裕を持って作れた方がいいんでしょうけど…。

過去公演:青コン企画(仮) 第三劇場プロデュース公演『ともだちが来た』より(撮影:山田世紀末)

──今回上演された作品『贋作・E.T.の墓』では、特に脚本の独創性に引き込まれました。脚本のモチーフは、どのように着想されたのでしょうか。

藤原:メキシコ料理屋でメンバーとご飯を食べていた時に、村側が「アメリカに『ビデオゲームの墓』っていう面白い都市伝説があって、商業的に失敗作とされたゲームが、砂漠に埋められた場所があるらしい…という話なんだけど、これを演劇にできないかな?」と言い出して。僕もちょうど、スピルバーグの『レディ・プレイヤー1』という、これまたゲームをモチーフにした映画が気になっていたところだったので、何かこのあたりを作品のヒントにできないかな、と。

村側:作品の構想自体はすごく早くできていました。たしかあらすじは4月にはできていたよね。

藤原:それからしばらく経ったある時、別の知人との電話で、生活する中での問題意識について話していたんです。それがだんだんと自分の中で「地層」や「墓」のイメージとしてビジュアルになっていって…。ふと、「あれ、そういえばこの前、ビデオゲームの”墓”の話をしてたな?」と気がついて、今回の作品の「ゲーム」や「墓」というモチーフにつながりました。

撮影:大内太智

──作品の軸は、メンバーの共通の関心が集まってできあがったのですね。藤原さんの「問題意識」は、どのように作品に込めていったのでしょうか。

藤原:世の中に「間違って埋められてしまうもの」ってたくさんあるなと思っていて。本当は魅力があるものなのに、いわれのない偏見や、「常識」とされているもので見えなくされてしまうもの、というか。我々はそういうものが堆積した上に立って生きているし、自分もそれを自覚して生きていきたい、という思いがあります。舞台上には5割くらいしか載せられなかったなという手応えなんですが、脚本も手直しして、3月の全国学生演劇祭ではもっとお客さんに伝えられたらなと思っています。

撮影:脇田友

──お2人はもうそろそろ大学を卒業予定とのことですが、青コン企画(仮)として、今後も活動は続けていく予定ですか?

村側:とりあえず大学にいる間はどんな形であっても演劇に関わりながら、自分たちなりの創作活動を続けていきたいと思っています。あっ…でもその前に卒業か(笑)。青コン企画(仮)の活動も続けていきたいし、せっかく続けるなら規模ももっと大きくしていきたいですね。

藤原:僕は「今回の演劇祭で箸にも棒にもかからなかったら、演劇をやめよう」という気持ちでいたのですが、ありがたいことにたくさん賞もいただけて、迷っているところです。続けるにしても、もっと多くの人に見てもらえるものにしたいですね。演劇を、もっとポップに楽しんでもらえるものにできたらいいなと思います。

撮影:大内太智

──さらにパワーアップした作品が全国学生演劇祭の舞台で上演されるのが楽しみです!今後の活躍を応援しています!


青コン企画(仮)
同志社大学の学生劇団、第三劇場に所属していた、「青春コンプの会」を自称する男たち3人が中心となって2022年に結成した集団。
現代口語から熱量芝居まで、ジャンルを問わず「極我々的」な活動を目論む。
昨夏、3年ぶりの第三劇場プロデュース公演として、第2回OMS戯曲賞大賞受賞作、鈴江俊郎『ともだちが来た』を上演した。
今夏、念願だった京都学生演劇祭2023に出場。
新作『贋作E.T. の墓』(脚本・演出:藤原千代) を上演。大賞・審査員賞をはじめ、計6賞を受賞。

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