インタビュー特集

演劇が持つ力、その可能性を信じて。「劇団FAX」が目指す、新たな地平【vol.1】

自らが立ち上げた「劇団FAX」代表として、京都や東京で公演活動を行っている玉井秀和さん。京都大学に入学したことを機に、大学公認サークル「劇団ケッペキ」で演劇活動を始めた玉井さんは、2016年に「劇団FAX」を旗揚げした。以後、自身で脚本、演出を手掛ける作品も含め、年間4〜6本公演をプロデュースする傍ら、フリーランスの舞台監督としても活動している。「演劇には、人を集めて、みんなと共通する部分を感覚的に共有できる力がある。そこに、可能性を感じています」。演劇の本質を問い、人とのつながりを作ることを楽しみ続ける玉井さんに、演劇にかける思いを聞いた。【2回連載の1回目】

──玉井さんは京都大学に入学後、演劇の道を志したということですが、何かきっかけがあったのですか?

僕は東京出身なのですが、予備校時代、ふと観劇に学割が効くことを思い出し、週末は東京の劇場を回っていました。ある時、帝国劇場で「レ・ミゼラブル」を観ることに。作品にはそれほど惹かれなかったのですが、観劇していると「舞台で失敗した時に、裏方はどういう感じで動くんだろう」ということが気になったんです。お客さんにミスや失敗が伝わらないように、舞台裏は色々な形でフォローしているわけで、そんな視点から、演劇に興味を持ちました。

僕が京都大学法学部に入学した時は、「劇団ケッペキ」が唯一の大学公認の演劇サークルでした。新歓コンパで出会った先輩とウマが合う感じがして、「劇団ケッペキ」に入りました。
裏側を全部知ることができる舞台監督を希望していたんですが、いきなりできるものでもないので、最初は音響を担当しました。2回目の公演で念願の舞台監督の補佐に付けてもらい、さらに「チョイ役で出てみろ」と言われて同時に役者もやることになった、という感じです。

──失敗した時の裏方の動き。ユニークな視点から、演劇への興味を持たれたのですね。音響、舞台監督、役者と経験する中で、演劇に対する考え方や面白さは、深まっていきましたか?

演劇に関する知識は増えていったんですけど、「演劇の面白さ」は、いまだにあまりよくわかっていなくて(笑)。
例えば「みんなと喋ってるのが楽しい」とか、「公演後の打ち上げが楽しい」とか。「面白いな、楽しいな」と思う瞬間は度々あるんですが、「これって、もしかして演劇じゃなくても作れるかも」と思うこともあります。

大学時代は家の鍵をいつも開けていて、誰でも部屋に入っていいことにしていたんです。僕の部屋で集まって、みんなでわいわいガヤガヤやって、Youtubeに配信する動画を撮ってみるとか、自分たちでラジオ番組をやって配信してみるとか、虫を食べてみるとか。基本的にひまだったんで、ケッペキで出会った仲間と集まって、いろんなことを、思い切り楽しんでやってました。その楽しさの延長で、今も演劇を続けているという部分はありますね。

時々、自分で役者をやりたくなる時もあるんです。たとえば演出をしている中で、役者の動きを見ながら「僕はこういうふうに身体を動かしたい!」という願望が出てくることがあります。そんなアイデアが溜まっていった時に、「自分でやってみようかな」となる。なので、4年に1度、オリンピックくらいの周期で役者をやってます(笑)。

撮影:脇田友

──「劇団ケッペキ」在籍時の2016年に、「劇団FAX」を旗揚げされます。自身の劇団を立ち上げた経緯を教えてください。

学部の3年生になると、ケッペキで企画を立てたり、公演の演出をしたりと、重役に就くことが多くなっていきました。その分、ちょっと斬新なこととか、もっと細々したことだとか、そういった自分のやりたいことができなくなっていったんですね。
それで「劇団FAX」を立ち上げました。当初は、4、5人で集まって「お客さんから頂いたチケット収入で、寿司を食う」という軽い気持ちで、2017年1月に第1回公演をやりました。そのあとすぐ、同年3月に、第2回公演もできたんです。ケッペキの友人の卒業公演として、『春の大感謝祭』と題してやりました。2回目は「お客さんは知らんけど、自分たちは楽しい」という舞台で、全編ほぼ下ネタ(笑)。僕が作った曲を歌ったりとか、好き勝手にしていました。そこから紆余曲折あって、第3回公演で初めて自作の長編に挑みました。

作品を追って話をすると、第1回公演は、前田司郎さんの『正月のあの音』という作品をやったんです。僕自身としては元々、前田さんや平田オリザさん、松田正隆さんなど静かで渋い作品が好きなのですが、一方で若者だけでやるには不向きかなと思っていました。
そんな時に、メンバーが「野田秀樹をやりたい」と言い出したんです。とりあえず、僕は手に入るだけの野田戯曲を読んで、脚本を書いて、第3回公演で『贋作・蟹工船』という作品をやりました。それ以来、主な出演メンバーが一緒だったこともあり、「劇団FAX」では野田秀樹さんっぽい脚本をずっとやるようになったんですね。

野田さんの作品の面白さは、飛躍がある展開にあります。一方で、自分の書く脚本は、展開が論理的で意識的なものに縛られてしまっている。このまま「野田さんっぽさ」を追いかけていても、自分の色は出せないのではないか、という思いがありました。
そこから、思い切って自分の脚本の書き方を変えてみることにしたんです。「先に話の大筋があって、それに合ったモチーフを扱う」という方法で書いていたところを、「モチーフを先に置いてみて、その中に筋を見つけ出す」という方法にしてみました。乱立させたモチーフが、うまい具合に結び付いたらいいな、と思いながら、脚本を書くようになりました。

撮影:脇田友

それまでは「演劇作品は、こうしなければならない」ということに悩み、舞台の本番を見る時も「うまくできているかどうか」を判断基準としていました。それが、新しい書き方で作った脚本の舞台を実際に見た時、自分の中の無意識の部分が感性として出てくるような、それまでにはなかった広がりを感じたんです。自分で書いた脚本だけど、実際に舞台で作品を見た時に新しい気づきがあり、なんとなく、いい感じがしたんです。

そこで次は、色々な団体がさまざまなモチーフを持ち寄って集まるような舞台をやってみたいと考えました。今年4月の『春の大感謝祭』では劇団FAXだけでなく、ヨルノサンポ団と共通舞台に声をかけて、3団体で計5つの演目と幕間のイベントが見られるような構成にしてみたんです。
(【vol.2】に続く)


sponsored by TOWA株式会社